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2008年4月 9日 (水)

オペレッタ「天国と地獄」

オペレッタ『天国と地獄』は、オッフェンバックが本領を発揮したパロディです。
19世紀の当時も高尚なオペラで上演されていた有名なギリシア神話を、徹底的に喜劇に書き換えしました。

元になったギリシア神話は『オルフェウスとエウリュディケー』で、こんな話です:

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オルフェウスは、後に「こと座」になる竪琴を弾いていた、ギリシア神話では有名な吟遊詩人です。さて、彼は大変な愛妻家でしたが、妻のエウリュディケーが毒蛇に噛まれて死んでしまいました。そこでオルフェウスが冥府に下り、黄泉の王プルトンに竪琴を弾いて頼みこんだ結果、「黄泉から戻るまで決して振り向かない」という条件で妻を取り戻せることになりました。しかし、もう少しのところで不安で振り向いてしまい、妻とは二度と会えなくなりました。
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余談ですが、同じ話が、日本ではイザナギとイザナミの冥府めぐりの話として伝わっています。舞台となった黄泉平坂(よもつひらさか)は、米子の隣の安来市にあります。

さて、この名作がオッフェンバックの手にかかると、こんなパロディになりました:

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オルフェウスとエウリディケーは夫婦ですが、ギリシア神話とは違い、いつも喧嘩していて、お互いに堂々と浮気し合う最悪の仲です。序曲に出てくるバイオリンソロは、なかなか美しいようですが、実はコミカルな夫婦喧嘩の場面です。

エウリュディケーの浮気相手は羊飼いなのですが、実はこの羊飼いが黄泉の王プルトンの化けた姿です。プルトンは、エウリュディケーを騙して毒蛇に噛ませ、彼女を冥府に連れ帰りました。

さて、妻が死んだオルフェウスは悲しむどころか、これで堂々と愛人の元に行けると大喜びです。ところが、彼は「世論」に非難されて、しかたなく地獄に連れ戻しに行くことになりました。「世論」を気にして取り繕うところも、当時の世相の風刺です。

神々の主ジュピター(ゼウス)も現れます。ジュピターは、自分のスケベ心もあって、プルトンにエウリュディケーを返すように言うのですが、逆に「あなたも昔から浮気ばかりだ」と言い返されてしまいます。ギリシア神話には、ジュピターが人間の美女と浮気する話が多いので、それを皮肉っているのです。

ジュピターとプルトンをはじめ、神々はゾロゾロと地獄に行って、でたらめの大宴会を始めます。これが有名な「カンカン」の場面です。この大宴会の隙に、主神ジュピターはエウリュディケーを口説こうとします。浮気性の彼女は、地獄の生活のすっかり退屈してしまっていたので、その気になってジュピターと天界に行こうとします。

そんなところに、オルフェウスが現れ、「世論」にしたがって仕方なく、妻を返すように言います。そこで、ギリシア神話の原作同様、「黄泉から出るまで振り向かない」という約束で、妻を取り戻せることになりました。「世論」はオルフェウスを励ますが、もう少しというところで、エウリュディケーを気に入ったジュピターが雷をならして妨害し、ついにオルフェウスは振り向いてしまいます。

「世論」はがっかりするが、オルフェウスは堂々と妻と別れられて、実は大喜びで帰ります。プルトンはエウリュディケーを地獄に残そうとしますが、ジュピターがバッカスの巫女として彼女を連れ去ってしまい、物語は幕を閉じます。

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(原題は『地獄のオルフェ』、脚本原作はカールクレーマー、初演は1858年)

こんなふざけたお話ですから、コンサートの演奏も、どうぞ気軽にお聞き下さい。

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